2014年5月15日木曜日

初鰹

季節が変わると、その季節にふさわしいものを食べたくなるのは人情ですね。
今週は何度かをいただきました。
甚六の黒板に「初鰹のたたき」とあり、前日も鰹を食べたせいか、あまり「初鰹」という意識はありませんでしたね。


江戸っ子の初鰹好きは「女房を質に置いても……」というくらい有名ですが、『徒然草』には、「鎌倉の年寄りの申し侍りしは、この魚おのれの等若かりし世までは、はかばしき人の前に出づることを侍らざりき」とあります。
鰹は下魚で珍重するほどの魚ではなかったようです。
何故、鰹がこれほど喜ばれるようになったのか、その理由は鰹自体の食べ方の変化にあったのです。

奈良や京都では新鮮な鰹は手に入らないので、鰹は一度蒸して干し固め、現在の鰹節に近いものに加工して都に運んだのです。蒸した鰹は旨味が抜け出た搾りかすのようなもので、美味しいわけではないのです。
蒸した時に出る汁は調味料として珍重され、この汁は「いろり」と呼ばれていました。
これが鎌倉時代になると、鎌倉は海の前なので新鮮な獲れたての鰹が賞味されるようになり、人気になったのです。
それを兼好法師はまた、『徒然草』で「かようの物も、世の末になれば、上さままでも入りたつわざこそ侍れ」と言って、上流階級の人達が鰹をもてはやすのを非難しているのです。
兼好法師って鰹嫌い!?

さらに鰹は武家社会に浸透してゆき、「勝負に勝つ魚」としてよく酒の肴として食べられたのでした。
武士は鰹のある季節には、出陣の際に必ず食べるようになりました。
江戸時代に入ると喧嘩に勝つ、博打に勝つ、相場に勝つ……と庶民にも人気になり、特に初もの好きな江戸っ子は、初鰹に法外な値段を付けたのです。

今年は、ニュースによると近年にないくらい鰹が不漁だそうです。
原因は日本近海の黒潮の温度が低いことで、鰹が上がってこないそうですが、水温が上がれば鰹は獲れるのでしょうか?
早く、気安く鰹が食べたいですね。

0 件のコメント:

コメントを投稿