2013年12月2日月曜日

味覚よりも嗅覚か?

先週末のNHKBSの番組で、世界のドキュメンタリー・シリーズ「育てる・食べる・味わう」をご覧になった方もいるのではないでしょうか。
いや、非常に興味深い内容でした。
これはイギリスのBBCが今年制作したものでしたが、味覚がテーマで、研究の最前線を取材し、私たちはどのように「おいしさ」を感じているのかを解説。さらに、そのメカニズムを利用して「“おいしいけど不健康”な現代の食べ物を、“健康的でおいしく感じる”食べ物に変える」という試みを探るという内容でした。


そして今回の話の中心は「嗅覚」です。
先週、電車の中で不快な匂いに遭遇したことをブログに書きましたが、ハルコは以前から、食における「嗅覚」には並々ならぬ興味があるのです。
番組では、嗅覚障害があり「味がわからない」状態になった女性が登場しました。甘味や酸味などを感じることはできても、チョコレートアイスとバニラアイスの味の違いがわからなくなったという症例を出して、匂いの本質は何なのかを掘り下げていました。

嗅覚は、まず「揮発性物質(volatiles)」が鼻から入る気体中の物質を関知して、嗅覚器を刺激して生じます。これを「オルソネーザル(鼻腔香気)」と呼びます。
もう一つ、味わいの決め手になるのが「レトロネーザル(口腔香気)」です。
これは、食べ物を口に含んで咀嚼しているときに揮発する物質と、喉の奥から鼻に回って嗅覚を刺激するもの、この二つが味覚と嗅覚刺激が脳に到達して、総合的に「味わい」を形成するのだそうです。
例えば自分自身でも、料理屋さんで初めて飲んだ銘柄のワインのようでも、口に含んでその「鼻腔香気」と「口腔香気」を感じることによって、「あれ、これ前にどこかで飲んだ?」と、思い出す事がよくあります。
そうすると、そのときのレストランや何を食べていたかも一緒に思い出すのです。

番組の後半は、トマトの味を探求していた学者さんがトマトの味を分析した結果、甘味だけではおいしさを説明できないことを見いだし、やはり揮発性物質の「ゲラニアール」と「イソ吉草酸」が決め手であると突き止めたそうです。
番組ではこの二つの匂いを、ゲラニアールは花あるいは香水の匂い、イソ吉草酸は不快なニオイで汗のしみこんだ靴下のニオイ・更衣室のニオイだと分析し、これはそれぞれ単体では甘味もトマトの風味もない物質なのだそうです。
人間の脳って随分ダマされているんですね。こうなると、食品偽装なんかカワイイものです。

化学的な組み合せで、どんな味覚も「匂い」だけで作れてしまうのですね。
自然と科学でのせめぎ合いの世界ですが、やはり本物を知らないとダメだ、と思うハルコでした。
※写真はハルコ所有のソムリエ養成用の「匂い」のキットです。

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