2018年2月18日日曜日
幻の恩賜の葉巻
クラブデトラントの事績を
調べるために、
事務局長を務めていた
「ヴァンセーヌ」の
酒井一之さんのご自宅を訪問した。
酒井さんの書斎には、その当時の
議事録やクラブデトラント主催の
「料理フォーラム」など
大変に貴重な資料の山だった。
「シュークルート作っておくよ」というありがたいお言葉に甘えて、
晩ご飯までいただいてしまった。
自家製のソーモン・フュメ、サラダとドレッシング、
そして、シュークルートは、豚のソーセージやハムの他に豚足まであり、
大満足の贅沢な晩餐だった。
食後にディジェフティフでコニャックから、ポワール・ウイリアムス、
に自家製の杏仁のリキュールと相当痛飲してしまった。
ヴァンセーヌ時代には食後に、オクサマとハルコと酒井さんと
3人でカルヴァドスを1本飲み切ったこともあるくらい皆大の酒好きなのである。
話が煙草の話になり「その当時はよく葉巻も吸っていたね」と昔話をしていたら、
酒井さんがヒミドール(葉巻の保存箱)を持って来て、
中から1本の葉巻を取り出した。
「恩賜の葉巻だよ」
えっ、恩賜の煙草は見たこともあるけれど、恩賜の葉巻ってあるんだ。
恩賜と言っても今の若い方は知らないかもしれない。
恩賜とは主君から賜るという意味だが、日本では天皇から下賜される
物や公園などで使われている。
酒井さんも何かで顕彰されていただいたものらしい。
繁々と見ると十六八重表菊の御紋入りのリングが付いた葉巻なのだが、
煙草はかれこれ10数年前に止めてしまったのだ。
しかし、この恩賜の葉巻は2006年を最後に無くなってしまったと。
もし、吸えたらどんな香りと味がするんだろうかと考えると、
ちょと残念だった。
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2018年2月12日月曜日
天才、田辺年男の「焼きハマ。たそがれ〜」
本当に久しぶりにヌキテパに行った。
恵比寿の「あ・た・ごおる」の時代は
自宅が近く週に2~3回も通っていたのだ。
田辺年男といえば魚のグリエをさせたら
フレンチのシェフで一番だと思っている。
昔からシェフの味は変わらないと思っていたが、
実は凄く洗練されていたのだ。
スープ・ド・ポワソンも以前よりも
ピュアで深い味合いになって、
メインの魚は言うまでもない。
そして、一番食べたかったのは「ハマグリのグリエ」なのである。
ハマグリの蝶番を最初に切り落とすのだが、これは、焼いている時に
貝が開かないようにするためである。
次にハマグリ全体に小麦粉をまぶして焼いている時に貝の破損を防ぎ、
網を熱してハマグリ全体を炎を最強にして包むように焼くのだ。
焼き加減はハマグリの表面が真っ黒になるまで焼いて、
最初に切った蝶番にフォークを差し込み
熱々のうちに頬張るのだ。
鼻孔に香ばしく焼けたハマグリが充満し、口に熱いまま入れて咀嚼すると、
ジューシーで弾力のある身が快感である。
なぜ、単に焼いただけのハマグリがこんなにも旨いのだろうか。
そんなのは季節になると浜でも焼いているが、
それは、それで旨いが、田辺年男の「ハマグリのグリエ」は別次元なのだ。
おなじ魚介を焼いても、田辺シェフが焼くのと、スタッフが焼くでは全然違う。
シェフにこのことを聞いてみる・
「みんなは、焼いてある魚の焼き色の具合を見て判断するが、
それじゃ,ダメなんだ」
田辺年男は焼けたかどうか、裏をヒックリ返して見たりしない。
じつと炎を見ながら火がどこで、どうなっているか「火の道」を”感じる”のだそうだ。
東京体育大で体操のオリンピック候補選手となり、
その後プロボクサーに転身するという天性の身体能力の持ち主だから出来るのだ。
だから、「田辺年男は天才である。それも紙一重の」と本人に言ったら
笑っていた。
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